安全保障法制の問題点(改訂版)〜 植竹 和弘

前回の講演

一、集団的自衛権を巡る政府見解の推移

(一)憲法第九条の下での自衛権の解釈の推移

1945/8.15・・・ポツダム宣言受諾。無条件降伏
1946/11/3・・・日本国憲法公布
1947/5/3 ・・・日本国憲法施行
1950/6/25 ・・・朝鮮戦争勃発(~1953/7/27休戦)
1950/8/10・・・警察予備隊発足
1958/9/8・・・サンフランシスコ講和条約調印、日米安全保障条約発効
1952/10/15・・・警察予備隊を保安隊に改変
1954/3・・・日米相互防衛援助協定
1954/6・・・自衛隊法、防衛庁設置法
1954/7   自衛隊(陸上・海上・航空)発足
1957/7/8  砂川事件
1959/12/16 砂川事件最高裁大法廷判決
1960/6/23 日米相互協力及び安全保障条約

 (日米地位協定付き)発効(新安保条約)
 (注)自衛隊は、戦力ではなく「自衛力」、軍隊ではなく「自衛隊」

他国に侵略的脅威や攻撃的脅威を与える兵器を保有することは出来ない。大陸間弾道ミサイル、長距離戦略爆撃機、攻撃型空母は駄目である。

(二)1972年政府見解(全文)(第三段落の①②③は便宜上付記。原文にはない)
(1972年10月14日参議院決算委員会政府提出資料「集団的自衛権と憲法との関係」)

国際法上、国家は、いわゆる集団的自衛権、すなわち、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにかかわらず、実力を持って阻止することが正当化されるという地位を有しているものとされており、国際連合憲章第五一条、日本国との平和条約第五条(C)、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約全文並びに日本国とソビエト社会主義共和国連邦との共同宣言三第二段の規定は、この国際法の原則を宣明したものと思われる、そして、わが国が国際法上右の集団的自衛権を有していることは、主権国家である以上、当然と言わなければならない。

ところで、政府は従来から一貫して、わが国は国際法上いわゆる集団的自衛権を有しているとしても、国権の発動としてこれを行使することは、憲法の容認する自衛の措置の限界を超えるものであって許されないとの立場に立っているが、これは次のような考え方に基づくものである。

①憲法は、第九条において、同条にいわゆる戦争を放棄し、いわゆる戦力の保持を禁止しているが、前文において「全世界の国民が……平和の裡に生存する権利を有する」ことを確認し、また、第一三条において「生命、自由及び幸福追及に対する国民の権利については、……国政の上で、最大の尊重を必要とする」旨を定めていることからも、わが国が自らの存立を全うし国民が平和のうちに生存することまでも放棄していないことは明らかであって、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛の措置をとることを禁じているとは到底解されない。

②しかしながら、だからといって、平和主義をその基本原則とする憲法が、右にいう自衛のための措置を無制限に認めているとは解されないのであって、それは、あくまで外国の武力攻撃によって国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるという急迫、不正の事態に対処し、国民のこれらの権利を守るためのやむを得ない措置として初めて容認されるものであるから、その措置は、右の事態を排除するためとられるべき必要最低限の範囲にとどまるべきものである。

③そうだとすれば、わが憲法の下で武力行使を行うことが許されるのは、わが国に対する急迫、不正の侵害に対処する場合に限られるのであって、したがって、他国に加えられた武力攻撃を阻止することをその内容とするいわゆる集団的自衛権の行使は、憲法上許されないと言わざるを得ない。

このことから導かれる三要件は、

A わが国に対する急迫不正の侵害があること(武力攻撃が発生したこと)。
B これを排除するために他の適当な手段がないこと。
C 必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと。

(三)確立した憲法九条解釈

1983年2月22日衆議院予算委員会における角田内閣法制局長官の答弁で、「集団的自衛権の行使を憲法上認めたいという考え方があり、それを明確にしたいということであれば、憲法改正という手段を当然とらざるを得ないと思います。」と述べている。安倍晋太郎外務大臣、谷川防衛庁長官も「法制局長官の述べた通り」と答弁している。

1990年10月24日、工藤内閣法制局長官も同様の答弁をしている。その他、多くの政府側の答弁がなされてきた。

(四)確立した九条解釈の下での基本原則

①わが国に対する武力攻撃に対処するための個別的自衛権の行使に限定した武力行使
②個別的自衛権行使以外の場面での武力行使の禁止(海外での武力行使の禁止)
③他国との武力行使の一体化の禁止 他国軍隊への支援活動は非戦闘地域・広報地域に限定、支援内容も武力行使との一体化にならない範囲に限定。
④海外での活動の種類・範囲も、後方支援・人道復興支援などに限定
⑤武器使用も正当防衛・緊急避難の場合に限り、任務遂行のための武器使用禁止
⑥PKO参加五原則 *停戦合意、*受入同意、*中立、*中止・撤収、*自己保存型への武器使用制限

 

二、 2014年7月1日閣議決定

「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」(全文は添付資料で当日は配布されましたが、ここでは省きます。)

この閣議決定から導かれる新三要件は、

①わが国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず、わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合において、

②これを排除し、わが国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないときに、

③必要最小限度の実力の行使をすること。

(一)集団的自衛権の行使を認めるに至った立法事実(必要性)

我が国を取り巻く安全保障環境の根本的変化(安倍首相の念頭にあるのは中国の台頭か)朝鮮半島における有事の際に日本国民の救出に当たる米艦防護が必要で自衛隊の出動が想定されている。しかし北朝鮮には、有事の際に逃げようとする邦人を攻撃する余力はない。

中谷防衛大臣の国会答弁では、米艦に邦人が乗っているかどうかは重要ではないとしている。また、ホルムズ海峡機雷封鎖への対処での出動を挙げているが、総発電量に占める石油電源は一〇%弱。その内、ホルムズ海峡を通過するのはその約八割で、電源としては、影響は比較的低い。またイランとの関係は悪くないので、機雷封鎖の可能性も低い。米イージス艦防護を自衛隊がする可能性についても、米艦は自らを護り、他国に護らせることは考えていないという。中谷防衛大臣も「米軍は自己完結型の軍隊」との答弁をしている。日米軍事同盟が壊れ、日米同盟の抑止力が低下することへの配慮としての必要性に対しては、米国の世界戦略にとって集団的自衛権が認められなくても、日米軍事同盟が壊れることはない。

(二)7・1閣議決定の根拠

①従来の政府見解(一九七二年見解)との論理的整合性

1972年見解の「必要な自衛の措置」には「限定的な集団的自衛権行使」も含まれていた。つまり、「1972年政府見解」の②の「外国の武力攻撃」には、「誰に対する」が書いてないことを根拠に「我が国に対する+同盟国に対する」と読み替えるものである。

2015年3月24日の参議院安保法制特別委員会での質疑で横畠内閣法制局長官が1972年政府見解を作った時に、限定的な集団的自衛権行使を容認する法理が含まれていたとした。憲法九条の解釈変更ともいうべき安倍政権の解釈は、従来の政府見解である集団的自衛権そのものの否定を、その一部分である限定的な集団的自衛権を認める非論理性に驚く。1972年見解の作成者である吉国内閣法制局長官は、国会答弁で「同盟国への武力攻撃が発生している状況では、日本国民の生命、自由、幸福追求の権利は根底から覆らない」と述べている。昭和29年度成立の自衛隊法76条1項(防衛出動)の要件である「武力攻撃」は「我が国に対する外部からの武力攻撃」と定義されている。自衛権発動要件たる外国からの武力攻撃を「我が国に対する」ものという文言を法律に盛り込まなければ、自衛隊法は憲法九条違反になるため、それを避ける立法技術である。日本法体系のピラミッドからいえば、憲法―法律―政府見解であって、法律に反する政府見解は違法無効である。

2015年6月22日衆議院平和安全法制特別委員会での宮崎禮一元内閣法制局長官発言で、「この『外国の武力攻撃』とは何を指すかであります。外国とは相対的な概念でありますから、その後に『国民』とありますので、それとの関係において考えるしかありません。つまり、『外国のわが国に対する武力攻撃によってわが国民の』と読むしかないのであります。昭和四七年意見書と同趣旨を述べている平成16年6月18日答弁書というのがあり、そこには、『外部からの武力攻撃によって国民の生命や身体が』と言っています。これは同じことなんですが、これを見れば、外部からわが国に向けてなされる武力攻撃のことだけを指していることはより明白です。ところが、現在の政府答弁は、四七年意見書にわが国に対すると明白に書かれていないから、『外国の武力攻撃』とある表現には、わが国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃も含むと読めると強弁して、いわゆる新三要件には、四七年見解との連続性があると主張しているわけですが、これは、いわば、黒を白と言いくるめる類というしかありません。同年意見書における集団的自衛権違憲との結論は、その文章構成自体からも、論理の帰結として述べられているのであって、当時の状況のみに応じた、いわば臨時的な当てはめの結果などと解する余地は全くないと思います」と述べている。

 ②砂川最高裁判決

 判決は、在日駐留米軍が憲法九条の「戦力」に該当するかが争点であり、自衛隊の合憲、違憲すら判断されていない。まして、集団的自衛権など全く想定されていない。

 

三、安全保障法(案)の形式

(一)「平和安全法制整備法(案)」(我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法などの一部を改正する法律)(案)

第一条 自衛隊法の一部改正
第二条 国連平和維持活動協力法の一部改正
第三条 周辺事態法の一部改正(重要影響事態法へ)
第四条 周辺事態船舶検査活動法の一部改正(重要影響事態等船舶検査活動法へ)
第五条 武力攻撃事態対処法の一部改正(存立危機事態対処法へ)
第六条 米軍行動関連措置法の一部改正(米軍等行動関連措置法へ)
第七条 特定公共施設利用法の一部改正
第八条 海上輸送規制法の一部改正第九条 捕虜取扱い法の一部改正
第十条 国家安全保障会議設置法の一部改正

附則

(二)「国際平和支援法」(国際平和共同対処事態に際してわが国が実施する諸外国の軍隊などに対する協力支援に関する法律)(案)

【用語解説】

存立危機事態
わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合。

武力攻撃事態
わが国に対する外部からの武力攻撃が発生した事態、又は、武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態。

武力攻撃予測事態
事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態。

周辺事態
そのまま放置すればわが国に対する直接の武力攻撃に至る恐れのある事態等わが国の周辺地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態。

重要影響事態
そのまま放置すればわが国に対する直接の武力攻撃に至る恐れのある事態等わが国の平和と安全に重要な影響を与える事態。

※周辺事態法を改正して「我が国周辺地域における」という地理的限定を取り払い、自衛隊がグローバルに米軍やその他の国の軍隊の後方支援を可能にする重要影響事態法案上の事態概念。

国際平和共同対処事態∥国際社会の平和と安全を脅かす事態で、その脅威を除去するために国際社会が国際連合憲章の目的に従い共同対処する活動で、わが国が主体的積極に寄与する必要がある事態。国際平和支援法案の事態概念。

※重要影響事態法と並んで、自衛隊が地理的限定のないグローバル化に米軍や他国軍隊の支援を可能にするものが国際平和支援法(案)。


四、安保法制改定案の基本的な性格と問題点

(一)存立危機事態への対応法制の整備

わが国に対する武力攻撃がなくても、わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生、これによってわが国の存立が脅かされる等の事態(存立危機事態)に対し、防衛出動を行い米軍その他の外国部隊の行動を支援し、強制的な船舶検査活動を行う等の有事関連法制を整備するものである。従来の政府見解を根底から覆し、集団的自衛権の行使を認めようとするものである。

これまでの三要件と新三要件の「必要最小限度」の違いを見ると、個別的自衛権の場合、いわば火の粉を払いさえすれば良く、自衛の措置は自国だけで判断出来る。しかし集団的自衛権の場合、「存立危機事態」を終結するためにどこまで反撃すればいいか不明確である。飛んでくるミサイル迎撃までか。発射したミサイル基地破壊までか。攻撃国の全ミサイル基地破壊までか。かつ、どこまで反撃すればいいのか。自国だけでは判断できない。事態対処法三条四項にも武力行使は「事態に応じ合理的に必要と判断される限度」で行使せよと規定されており、「必要最小限度」とは規定されていない。また、従来の専守防衛にいささかの変更もないというのは、全くの嘘である。防衛省の公式見解によれば、専守防衛とは「相手から武力攻撃を受けた時に初めて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限のものに限るなど、憲法の精神に則った受動的な防衛戦略の姿勢」である。政府の答弁では、相手の攻撃の意思を「推測」し、政府の裁量で新三要件を充足したとして、存立危機事態を排除するための武力攻撃を行う可能性を明らかにした。わが国への攻撃もなく、その意思を確認できなくても、「推測による裁量」で武力行使できるという。しかし、これは「先制攻撃」に他ならない。

(二)周辺事態法を重要影響事態法へ改正

我が国周辺地域での「周辺事態」に対応する米軍の後方地域支援等を地域の限定をなくし、重要影響事態に対応する外国軍隊(米国に限らない)に対し、自衛隊が後方支援活動を行うものである。重要影響事態での後方支援は、兵站活動として「アーミテージ・ナイレポート」でアメリカから求められていたものである。四月の新日米ガイドラインにも追記された活動で、アメリカの主眼は、存立危機での防衛ではなく、重要影響事態における後方支援(兵站活動)にある。弾薬の提供、戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油・整備も含む。従来の「非戦闘地域」から「現に戦闘行為が行われている現場以外」へと広がっている。また、船舶検査活動も「周辺地域」から「地域限定なし」へと広がっている。これらは、外国軍隊との「武力行使の一体化」、自衛隊が相手国との交戦状態に陥り、武力の行使に至る危険がある。船舶検査活動も「周辺地域」から「地域限定なし」へと広がっている。

従前の周辺事態法では「武器」は提供できないとされており、この「武器」には「(弾薬も含む)」と明記されている。改正法でも「武器」の提供は出来ないが「弾薬」の提供は可能というのが政府答弁である。この弾薬には、ミサイル、核兵器も「核弾頭がついている」から「弾薬に」含まれると中谷防衛大臣は答弁で述べている。

外国軍隊との「武力行使の一体化」の問題については、自衛隊が相手国との交戦状態に陥り、武力の行使に至る危険がある。また後方支援中に「危ないからオレ帰る」ということが許されるのか。「自衛隊のリスクが上がらない」はウソである。また後方支援が行われる「重要影響事態」については、存立危機事態の新三要件のような「要件」が存在せず、かなりあいまいな「総合判断」で派遣が可能である。しかも重要影響事態は、存立危機事態やPKOでの自衛隊派遣と両立するため、認定の緩い後方支援で自衛隊を派遣し、その後に存立危機事態へ発展するということも考えられる。

改正自衛隊法九五条の二で「米軍等の武器等防護」のための武器使用が可能になった。「我が国の防衛に資する活動に従事」している米軍等への攻撃があれば、新三要件を飛ばして集団的自衛権を行使できることになっている。すなわち、A国が、日本と合同演習中の米艦にミサイルを発射する準備をしているという場合、存立危機事態の認定なしで、自衛官は米艦という武器を防御すべく、ミサイル基地を攻撃出来ることになる。わが国への攻撃がなく、他国への攻撃をもってそのミサイルを迎撃出来れば「限定的」などではなくまさに「フルスペックの集団的自衛権の行使」そのものになる。

平時での行動を予定している国際平和活動支援法等には、「防衛大臣の安全配慮義務」が明記されているが、重要影響事態法にはない。「現に戦闘が行われていない現場」での後方支援活動は「平時」の立て付けになっているのだが、実は、「有事」と同等の活動を予定しているので、安全配慮義務を明記できなかったのか。更に、存立危機事態(有事)において後方支援する場合があるとされている米軍等との行動関連措置法にも安全配慮義務規定はない。すべての場合に自衛官の安全配慮義務を貫徹したというのはウソである。

(三)国際平和支援法(自衛隊海外派遣恒久法)の制定
従来のテロ特措法、イラク特措法などの個別立法から自衛隊派遣の恒久法にして、国際平和共同対処事態について、武力行使を行う外国軍隊に対して自衛隊が協力支援活動を行うものである。この活動は、弾薬の提供、戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油・整備も含む。従来の「非戦闘地域」から「現に戦闘行為が行われている現場以外」へとなる。また船舶検査活動も「周辺地域」から「地域限定なし」へと広がる。これらは外国軍隊との「武力行使の一体化」、自衛隊が相手国との交戦状態に陥り、武力の行使に至る危険が増す。

(四)国連平和維持活動協力法の改正

国連PKOの業務拡大、国連が統括しない有志連合等による「国際平和安全活動」へ活動範囲を広げるものである。従来PKO五原則(停戦合意、受入同意、中立、中止・撤収、自己保存型への武器使用制限)であったが、「駆け付け警護」を認め、その際、任務遂行のための武器使用を可能にする。

「在外邦人の救出規定」を設置、その際、任務遂行のための武器使用を可能にした。これらは新三要件は関係なしに、政府判断で行われる。また自己防衛のための武器使用から、任務遂行のための武器使用になり、自衛隊が交戦状態に陥り、武力行使に至る危険がある。

(五)外国軍隊の武器防護などの自衛隊法の改正

グレーゾーン事態(武力攻撃に至らない侵害)への対処として、「我が国の防衛に資する活動」を行う米軍の船舶・航空機その他の武器を防護するための武器使用を可能にするものである。これにより地理的限定がないこと、現場の自衛官の判断によるので、すでに問題点として前述していることが当てはまり、集団的自衛権行使と変わらない事態の危惧がある。

 

五、「存立危機事態」と

集団的自衛権行使の具体的問題点

(一)「存立危機事態」要件の不明確さ

「我が国の存立が脅かされる」「国民の権利が根底から覆される明白な危険」は定義として極めて不明確、主観的判断であり、政府の濫用を防止できない。

(二)「密接な関係にある他国」の非限定性

判断基準は法律にはない。国会答弁でも「個別具体的な状況に即して総合的に判断する」とされている。

(三)地理的限定がない

これまでの九条解釈では、海外での武力行使は行わないとの原則の下、自衛隊の実力行使はわが国を防衛するための受動的なものであり、わが国の領土・領海・領空とその周辺の公海・公海上空に限られてきた。今後は、新三要件を満たすと判断されれば、地球の裏側まで自衛隊の活動範囲は広まる。

(四)民主的統制の困難さ

法文上は原則国会の事前承認、緊急の際は事後承認であるが、だれが「存立危機事態」の判断をしたかは、特定秘密保護法により、国家安全保障会議(日本版NSC)は、防衛に関する秘密の対象になっている。国家安全保障会議では首相・官房長官・外務大臣・防衛大臣の四人で決められてしまう。判断資料は、特定秘密指定されるだろうから、国会のコントロールは不可能であろう。

(五)存立危機事態対処法改正法案における新第二要件、新第三要件の不明確性
「(武力の行使の他に)適当な手段がない」ことの客観的な判断基準がない点と「(武力の行使は)事態に応じ合理的に必要と判断される限度においてなされなければならない。」と「必要な最小限度」から「合理的に必要と判断される限度」へと変えられた。わが国に対する武力攻撃排除の場合と異なり、「存立危機武力攻撃」なるものには地理的限定もなく、その攻撃のどこまでが「我が国の存立等」にかかわるのかの判断も困難なことが多いと思われるため、武力行使の「必要」な限度の判断基準は曖昧にならざるを得ない。

(六)先制攻撃をした国のための集団的自衛権行使の問題

先制攻撃は国際法上違法な武力行使である。A国がB国を先制攻撃した結果A国がB国から武力攻撃を受けた場合に、新三要件を充たすとしてA国のためにわが国が集団的自衛権を行使して反撃することは、違法な武力行使に加担するものとして、国際法上違法となる。政府はこのような行使を否定しているが、米国のイラク戦争をわが国政府が直ちに支持した例もあり,危惧されるところである。

(七)国連の軍事的措置への参加も可能

憲法九条により、これまでは国連の集団安全保障措置(軍事的措置)への参加は許されないとされてきた(内閣法制局長官答弁)が、これからは参加可能になる。

六、日本国憲法に違反すること

(一)恒久平和主義に違反する

確立した憲法第九条解釈の下での基本原則(本文一の四参照)に反する。

(二)立憲主義違反

立憲主義:憲法によって個人の自由・権利を確保するために国家権力を制限することを目的とする近代憲法の基本理念(憲法前文、九七条、九九条)。

戦後の歴史を通じて積み重ねられてきた憲法秩序、憲法規範の内容を、憲法改正手続によらず、一内閣の憲法解釈の変更や法律の制定によって改変する事は憲法尊重擁護義務のある国務大臣や国会議員のなしうるところではない。

(三)国民主権違反

本来、憲法改正をしなければ出来ないことを、閣議決定や法律の制定・改正によって行うことは、憲法九六条を潜脱し、国民主権(国民の憲法制定権、憲法改正権)を侵害することである。以上。

 

【注】左記のものが添付資料として挙げられましたが、ここではすべて省きました。必要があれば、編集部に問い合わせて下さい。メールなら添付できます。

1.「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」

2.「新三要件の従前の憲法解釈との論理的整合性等について」

3.「アーミテージ・ナイレポート」

4.「日米新ガイドライン」(2015.4.27)

5.ポツダム宣言(現代語訳)